■生物多様性と希少種って?
皆さんは「生物多様性」について考えたことはありますか?生物多様性とは、いきものの豊かな個性とそれらのつながりのことを指しています。すべてのいきものにはそれぞれの個性があり、そして互いにつながり支え合って生きています。
しかし、現在、さまざまないきものが絶滅の危機に瀕して希少な存在となっており、生物多様性が失われつつあるのです。
京都府では、絶滅の恐れのある希少ないきものをまとめた資料集「京都府改訂版レッドリスト」を作成し、野生生物の保全活動に活用しています。
京都水族館でも、京都府内に生息する絶滅危惧種の保全を目的として、淡水魚や両生類の生息域外保全や飼育下での繁殖に取り組んでいます。2023年度は、オヤニラミやカワバタモロコ、アブラヒガイなど計4種の繁殖に成功しました。
オヤニラミ
カワバタモロコ
アブラヒガイ
■京都薬用植物園と希少種の相互展示が始まりました
この度、京都水族館と武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園がそれぞれ保有・飼育する、京都府内で絶滅の恐れがあるとされる希少種の魚と植物を交換し相互に展示する取り組みを開始しました。
対象となるいきものは、京都府改訂版レッドリストに掲載される希少種の魚と植物です。相互展示を行うことで、両園館を訪れるお客さまに間近で希少種を観察いただき、いきものを取り巻く環境について考える機会を提供します。
京都薬用植物園からはオニバスやミズアオイなど、9種類の水生植物をご提供いただき、館内の「京の里山」エリアの最下段の池で展示しています。
4月22日(月)、京都薬用植物園の方にお越しいただき、当館の飼育スタッフとともに一部植物の植え付け作業を行いました。
薬用植物園さんと一緒に植え付け作業
オグラコウホネの植え付けのようす
■4月23日(火)いきもの観察会を行いました
今回の協働取り組みを記念し、希少ないきものを観察する「いきもの観察会」を4月23日(火)に開催しました。
観察会の冒頭は、京都水族館と京都薬用植物園から、今回新たに希少種を導入する「京の里山」エリアが再現している“里山”とはどういう場所なのか、そしていきものについて解説しました。
水生植物は、「カキツバタ」と「オグラコウホネ」について解説。水面で黄色い花を咲かせる「オグラコウホネ」は、京都府の巨椋池と丹波地域の特産の植物ですが、現在は巨椋池から消失してしまっていること、ワサビのような根の部分が生薬として用いられることを学びました。
解説のようす
そして、京都水族館は「カワバタモロコ」について解説。繁殖期を迎えるオスは、体色が金色に変わること、毎年館内で繁殖を行って希少種を守っていることを伝えました。
カワバタモロコ観察のようす
解説を聞いた後は、京都の希少種を展示している「山紫水明」エリアのいきものを観察。子どもたちは、興味津々なようすで観察していました。
そして、「京の里山」エリアに新たに展示した水生植物も観察しました。
水生植物観察中
当日は、あいにくの雨模様で予定していた植物の植え付け体験はできませんでしたが、計43名の京都市内の小学生が参加し、希少な水生植物と魚について学ぶことができました。
■カワバタモロコを薬用植物園へ!
そして、京都水族館からはカワバタモロコを提供。5月初旬、カワバタモロコ84個体を京都薬用植物園内の「いきもの共生エリア」に搬入しました。
「いきもの共生エリア」のようす
京都水族館の飼育スタッフはこれからも定期的に薬用植物園を訪れ、繁殖につながるよう協働で取り組んでまいります。
■最後に
「京の里山」エリアの水生植物は、現在ぐんぐん成長中です!京都水族館にご来館の際は、ぜひ観察してみてください。
京都水族館はこれからも、絶滅の危機にある希少種の保全とその発信を行ってまいります。
成長中の水生植物
エゾミソハギ開花!
【武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園様からコメントをいただきました!】
本取組では、京都府レッドリスト収載生物である水生植物とカワバタモロコを交換し、両施設で展示しております。
私たちが植え付けた植物は水族館のいきもののように激しく動かないので、退屈と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、カワバタモロコの隠れ場所や産卵地になっている姿、また季節によって花を咲かせたり種子をつけたりする様子などを観察していただくことで、植物の魅力を感じていただけると思います。
さらに、レッドリストに掲載されている希少生物に触れ合うことで、生物多様性を守るために、自分自身に何ができるかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。
京都水族館では、未来の地球にバトンをつなぐ、サステナビリティ推進プロジェクト「AQTION!(アクション)」を行っています。
水族館だからこそ見えてくる地球や社会の課題に対して、未来を担うこどもたちや地域社会と一緒に取り組みます。
AQTION!の活動について、くわしくは
こちら